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五島列島・福江島 未来への提言 1995
〜エコロジー&クリーンアイランドからブループラネットレボリューションへ〜
(この提言は、1995年、(社)福江青年会議所指導力開発委員会が、五島列島・福江島の未来の為に提出した提言です。現在の五島市がまだ合併前で、コンピュータに関してもウインドーズ95が出たばかり、インターネットも現在のように活用されておらず、介護保険なども考えられてなかった当時、青年会議所を一生懸命やっていた若者たちが考えた提言です。そういうわけで、現在とは多少内容の異なる点がございますがご容赦ください。委員長 平山匡彦)

まえがき
 私たちの住む長崎県は、経済指標で見る限り、全国で最も貧しい地域のひとつです。
 中でも五島列島は、県内でも特に経済的に落ち込んだところで、これといった産業もなく、労働賃金も低く、基幹産業の農業・漁業も年々力を失い、人口は大きく減少し、老人比率のみが異常な伸びを見せている、そんな過疎の島なのです。

 ところが実際に住んでいる私たちには、そんな実感があまりありません。何故でしょうか?
 それは、国や県各自治体の首長や議員の方々の長年の努力によって、他の地域が羨むほどの効率の地方交付税を受け、また様々な補助を利用した公共事業の導入等、離島振興法を最大限に活用した、つまり公共の資金を基盤にした経済構造のおかげなのです。

 ジェット機・ジェットフォイルが就航し、道路も整備され、きれいなビルが立ち並び、一見繁栄しているように見える五島列島福江島ですが、実際の経済基盤は本当に脆弱で、日本経済も頭打ちで、先の見えない現在の状況では、まさに風前の灯状態。10年後どころか5年先も予測できないのが現状です。現実を冷徹に分析すればするほど、五島の未来に対しては暗澹たる気分になってきます。

 がしかし、希望がないわけではありません。五島にはまだ、美しい豊かな自然が残っています。素朴で人情味溢れた人々が大勢暮らしています。資本主義経済においては落ちこぼれの地域だといわれても仕方のない所ですが、だからこそ、私たちは、輝く程美しい空気と海と緑の中で生活することが出来るのです。

 日本青年会議所では、1993年に環境室を創設し、エコビジョン21の中で、「もったいない運動」を提唱し、「持続可能な経済発展」をキーワードに、地球に優しいライフスタイルの再構築を目指して活動を展開してきました。更にその理念とあわせて、以下の三つの行動原則も発表しました。
  1. 地球に優しいライフスタイルの定着化をはかる。
  2. 地球に優しいまちづくりをめざす。
  3. 地球と共生する社会システムをつくる。
 この流れを受け継ぎ、私たち福江青年会議所でも1995年の今年、五島地区の環境問題について情報を収集し、現在「環境データブック・福江1995」の製作を行っています。
 そして、今回の提言書は、この五島地区の環境情報収集の過程から生まれてきたのです。
 19〜20世紀型の大量生産・大量消費型の現代文明の落ちこぼれの五島だからこそ、地球と調和・共生する未来型社会に、最もスムーズに移行することが可能なのは、この五島列島福江島なのではないか!

 化石燃料を膨大に燃やすことで生まれた近代文明は、人類に便利さ・快適さを与え、成長すること、発展することこそが人類の目標としてきました。しかし、20世紀が終わろうとしている今現在、世界を見渡してみると、東西冷戦がやっと終わったのもつかの間、自然破壊・環境破壊による大気汚染・オゾン層の破壊・地球温暖化・異常気象・資源の枯渇・食糧危機・人口爆発・経済破綻・地域紛争・ありとあらゆる社会、経済システムの行き詰まりと崩壊・政治不信等々。数えだすときりが無いほどの矛盾が蔓延しています。

 多くの著名な学者や研究機関によると、このまま世界が有効な手立てを行わないと、地球は50年後には、確実に破綻をきたすと警告しています。

 私たちに残された時間は、あまりにも少ないことを今一度確認しなければなりません。

 19世紀以降、私たち人類が営々と築き上げてきた現代文明は、今確実に変質を遂げつつあるのです。望む望まないに関らず、人類が地球そのものに影響を与え、破壊することすらが可能な力を持ってしまったということによって、パラダイムシフトは必然的に行われていきます。

 前述したように、五島列島・福江島に住む私たちには、地球のことを常に感じることのできる美しい自然を与えられています。同時に離島とはいえ、東京・大阪に2時間以内で行ける交通手段を有し、光ファイバーも既に埋設されているなど情報・流通に関しては全国レベルの整備状況にあります。そこで現在、離島振興法等によって年間数百億の公共事業による資金が流入してくること等をうまく生かして「地球と調和・共生型の社会システム」をこの五島列島・福江島の地に、全国に先駆けて創ることが可能なのではと考え、様々な角度から検討を試みることにより、ここに提言書としてまとめました。
                                1995年度(社)福江青年会議所指導力開発委員会
目次
T.五島の現状
1.人口減少の問題
2.老人比率
3.産業問題

 @農業  A漁業  B商工業  C地場産業  D観光  E林業

U.エコロジー&クリーンアイランド構想
1.海岸線   2.河川の清浄化   3.水確保   4.空気の清浄化   
5.土の清浄化   6.ゴミ問題   7.未来エネルギー   8.省エネルギータウン構想


V.すべての人に優しい街づくり
1.交通体系   2.道路の整備   

W.アメニティータウン構想
1.自然を利用した公園の建設   2.図書館、芸術館等の建設   3.旧町名に戻す
4.高齢者同士による互助活動   5.福江島独自の祭り、イベント   6.特産品、地場産業


X.マルチメディア文化都市構想
1.福江マルチメディア館   2.通信を利用した医療

Y.市民参加型の自治
1.情報公開システム   2.公的施設の市民管理システム   3.市町村合併

Z.終わりにあたって
 アクションプラン-1   アクションプラン-2
T.五島の現状
1.人口減少の問題
 五島地区の人口は、昭和30年の149,583人をピークに年々減少傾向にあり、平成2年国勢調査では、86,266人(31,514世帯)となった。
 昭和60年国勢調査と比較すると、県平均1.95%減であるのに対し、五島地区は7.9%の減少である。(福江市4%減、郡部9.9%減)
 なお、人口分布は、平成2年国勢調査によると、下五島地区に54,143人(62.8%)上五島地区に32,123人(37.2%)となっている。
 減少の原因として、高度成長期当時、産業の担い手として、若年労働者の流出が激しく、義務教育終了後と共に島外流出の傾向が生じ、一度流出した若年層労働者の島内還流の動きはみられていない。また、その後も中学、高校の卒業と共に、進学・就職として島外に流出するパターンが定着し、島内には一定数しか残っていない。
(資料)
平成7年高校卒業者動向
 五島全体卒業者  1,106人
 進学者         278人
 就職者(県外)    340人
 就職者(県内)    172人
 専修・各種学校等  221人
 その他          95人


2.老人比率
 昭和30年の国勢調査では、年齢別人口の推移グラフは、高齢者が少なく、幼年者が多いピラミッド型に呈していたが、上記などの理由での若者の島外の流出と、近年の少産少死の傾向により、若年層の占める割合は激減し、近年の65歳以上の高齢者人口の占める割合は、増加の一途をたどっている。
(65歳以上の全体に占める割合)
昭和30年 8,659人(5.8%)  ⇒  平成2年 14,946人(17.3%)


3.産業問題
@農業
 水田率が30%と低く、肉用牛、葉タバコ、養蚕が3本柱とされている。
 しかし、近年の価格低迷により、温暖な気候を生かした早出し馬鈴薯、青果用かんしょや、施設野菜のメロン、いちご、アスパラガス等の導入が図られ、産地作りが進められているが、まだ主力商品となるには程遠いのが現状である。
 ただ、各種補助事業も行われ、全体的に産業として伸びる可能性はあるものの、農家の減少、高齢化、後継者不足、これらが最大の問題のようである。

農業就業人口/五島合計 平成2年度区分別農業就業人口
調査年度 農業就業人口 福江市 2,229人
平成2年 6,265人 富江町 660人
昭和60年 11,085人 玉之浦町 270人
昭和55年 12,178人 三井楽町 639人
昭和50年 14,969人 岐宿町 1,000人
昭和45年 19,243人

@)肉用牛
 昭和47年より肉用牛生産団地事業の積極的な投入により、昭和40年の飼育頭数8,320頭が、58年には12,063頭となり、県全体の14.0%を占めるに至ったが、近年、飼育者の高齢化や小規模農家層の減少等により飼育戸数、頭数共に減少し、平成元年には7,176頭となった。増頭を図るため、長崎西部地区域畜産基地建設事業等を実施し、平成6年2月には8,731頭と回復の兆しも見えてきている。
 輸入牛などの影響もあり、今後も厳しい産業であることには間違いないが、高品質の肉質であり、若い層の飼育者の育成が図れれば、そう悲観的ばかりでもないようである。
(肉用牛・飼育頭数)
昭和58年 昭和60年 昭和63年 平成元年 平成3年 平成5年 平成6年
12,063頭 11,300頭 8,370頭 7,176頭 8,441頭 8,731頭 8,498頭
(肉用牛粗生産額/単位;百万円)
昭和58年 昭和60年 昭和63年 平成元年 平成3年 平成5年 平成6年
1,706 1,587 1,717 1,762 1,741 1,210 1,367

A)葉タバコ
 下五島地区の葉タバコは、昭和63年産、平成元年産、平成4年産と販売単価日本一になるほど、高品質生産団地として面積拡大に努めているが、農家数の減少、近年の需要の低迷により、今後の大きな発展は難しい。
(葉タバコ作付面積/単位;ha)
昭和55年 昭和60年 昭和62年 平成元年 平成4年 平成6年 平成7年
386 318 281 258 232 237 244
(葉タバコ収穫量/単位;t)
昭和55年 昭和60年 昭和62年 平成元年 平成4年 平成6年 平成7年
728 601 449 595 692 620 546

B)養蚕
 ピーク時には、県内最大の養蚕団地を形成していたが、中国産などの輸入により、昭和50年代から繭価の低迷、養蚕農家の高齢化等により減少し、平成5年にはピーク時の約5分の1桑園面積253ha、上繭収量165トンとなった。それを受け、平成7年には神戸生絲の撤退となり、今後の見通しは暗いものとなった。
(養蚕粗生産額/単位;百万円)

昭和55年 昭和60年 昭和62年 平成元年 平成3年 平成5年 平成6年
1,668 1,122 346 983 379 280 198
(養蚕収穫量/単位;t)
昭和55年 昭和60年 昭和62年 平成元年 平成3年 平成5年 平成6年
826 622 259 393 198 165 131

A漁業
 平成3年度の生産額は、517.3億円で、平成4年度494.82億円、平成5年度は475.3億円と減少の一途をたどっている。
 生産額としては、県全体の24.7%。生産量としては、県全体の32.7%を占めている。
(漁業生産額/単位;百万円)

平成3年 平成4年 平成5年
指定漁業(巻き網) 27,355 23,112 22,631
一般漁業(指定漁業を除く) 12,966 12,870 11,737
養殖漁業 11,409 13,500 13,161
五島生産合計 51,730 49,482 47,530

B商工業
 商業は、平成7年3月1日現在で商店数1,261店、従業者数4,077人、商品販売額746億3千万円となっており、1商店あたり販売額は6千万円で、県平均「1億3千万円」と比べ規模がかなり小さい。
 製造業で従業者4人以上は、平成4年12月31日現在で事業所数66箇所、従業者数1,075人、製造品出荷額等122億9千万円で、県全体の事業所数の2.1%、出荷額ではわずかに0.7%を占めたにすぎない。また、1事業所あたりの従業者数、出荷額はそれぞれ16.3人、1億9千万円で県平均(26.7人、5億3千万円)をかなり下回っており、零細な事業所が多い。
(商業及び工業の現況)

市町村 商業(平成3年7月1日現在) 工業(平成5年12月31日)
商店数 従業員数(人) 商品販売額(百万円) 売場面積(u) 事業所数 従業者数(人) 出荷額(百万円)
長崎県 26,748 134,033 3,791,170 1,338,527 3,163 83,032 1,672,806
五島全体 1,894 6,209 105,906 81,532 134 1,576 14,880
福江市 712 2,829 58,206 32,037 38 609 7,514
南松浦郡全体 1,182 3,380 47,700 49,495 96 880 7,150
富江町 140 442 6,145 5,805 16 183 920
玉之浦町 50 92 850 1,316 3
三井楽町 82 216 2,401 2,603 5 75
岐宿町 70 171 2,159 3,441 7 117 1,889
奈留町 136 347 5,504 3,365 6 29 478
若松町 108 296 2,649 2,928 2
上五島町 173 606 9,659 11,923 17 145 1,060
新魚目町 100 262 3,559 5,762 14 103 365
有川町 203 667 11,392 9,041 18 152 866
奈良尾町 120 281 3,381 3,311 8 111 586

C地場産業
 水産加工品、椿油、五島手延べうどん、かんころ餅等がある。このうち全国的にも有名な「さんご」は、原木の枯渇等の問題がある。

D観光
 国内に残された、数少ない未開発の観光地として注目を浴び、水産業、農業に次ぐ五島の基幹産業となっている。
 ジェットフォイル就航や、福岡〜五島間の新造フェリー就航など本土との交通アクセスの充実や、関西を中心とした修学旅行の定着化、関西・関東との航空便の開拓など、五島の観光にとっても好ましい状況も生まれつつあるが、宿泊施設の整備・充実、島内交通の改善整備、オフシーズンの観光資源の開拓と観光客の誘致など、解決すべき課題も残されている。
 平成2年から観光客数が40万人前後と横ばい状態で、特に円高などにより修学旅行なども海外旅行へと移行する向きがあるため、魅力ある観光地となる為の研究と努力が急務と考えられる。

年次 昭和60年 昭和63年 平成2年 平成4年 平成5年 平成6年
観光客数(万人) 31.0 33.4 39.5 41.0 38.5 39.3

E林業
 平成6年発行の長崎県林業統計によれば、総林家数は6,190戸。このうち42%が農家林家で、専業林家は無い。
 民有林の森林面積は、農耕地からの転用等により18年間に約2,000ha増加し、40,111ha、そのうち人工林の面積は、18,006haと、全体の45%を人工林が占めている。
 人口林は、ヒノキが75%、スギが23%を占める。人工造林は、昭和35年頃から本格的に推進されたことから、主伐期に達したものが少ない。現在人工林の大部分は、間伐対象林分である。主伐は、国有林や県有林の一部で行われている程度で、木材生産量は11,000uである。ただ木材は、外材との競合により、なかなか換金できないのが現状のようである。
(主要林産物生産額/単位;千円)

木材(製材用) つばき油 生しいたけ 木炭
330,000 150,000 36,000 575 516,575
U.エコロジー&クリーンアイランド構想
 みるものに感動を与える福江島の美しい自然と景観は、ひいき目なしで全国の最上位に上げられるものであり、これは、我々が責任を持って子供たちに残していかなければならない財産なのである。
 しかし、これから先、一切の開発を許さない、工事を全部取りやめるというわけには行かない。なぜなら、我々は現実問題として、原始生活を送る訳には行かず、便利で文化的な生活も必要としているからである。

 ではどうすればよいのか。現在世界中で推進されている、環境との共存を考えた最先端の近自然型工法等を、これからどうしても必要とされる工事や、これまで造られたものの補修工事を含めてこの福江島に取り入れることが、新しい福江島の可能性を拓くことになる。それが『エコロジー&クリーンアイランド構想』である。

 『エコロジー&クリーンアイランド構想』とは、この福江島を小さな日本、又は世界と想定し、今現在最も注目されているゴミ問題、河川問題、森林問題、地球温暖化、オゾン層問題、エネルギー問題、これらすべてを総合的に捉え、人間が限りなく地球・環境と共存できるように、全生物が自然な形で生活していく方法を模索し、復元していく方向での事業を実験的に行う。この実験的事業を、ひとつの島全体で総合的に実現し結果を遺すことができれば、同じことが日本全体、地球全体で応用可能となる。
 このような実験は、他の地域の影響を受けにくい離島であるからこそ考えられるものであり、狭い地域であっても独立した嶋として結果を出すことが出来れば、環境と共存できる島として、未来地球環境のパイロット地区として位置づけられ、世界へ向けての情報源となることが出来る。このプロジェクトを、日本の、そして地球にとっても重要な事業として実行していくものである。

 このプロジェクトの結果、福江島が、世界へ対しての情報の発信源となれば、人を集めることができ、それが大きな産業に発展する可能性が生まれ、相乗的な島の発展が期待できる。
 こうして島が発展し、人が集まり潤うことが出来れば、島の独立ができ、強い地方自治体が形成できることになる。


U-1海岸線を復元し、生物の自然に近い形での生活を保障する。
 欧米では、以前より推し進められ、日本でも一部の護岸工事で行われているが、海と陸とを遮断し垂直なコンクリートを造ってしまうようなこれまでの工法から、水中生物と陸上生物、そしてその両方を往来する生物が自然と係わり合い、生活ができるような近自然型工法へと換えていく。
 こうすることによって、生物の自然な生態系が復活し、魚も戻り、海自体の自浄作用が最大限に発揮されるようになる。
 このように、自然の形に近い護岸工事を推進する。また、過去に工事されたものも、再度このような工法を用いたものに造りかえる。

(一例)
●海亀の産卵で有名な大宝の海岸が、護岸工事によって海亀が産卵できないようになった。
●大宝の浜から川へ上っていたシラスウナギが、工事のため上がれなくなった。
●以前は観光パンフレットにも使用されていた増田町の砂浜は砂がなくなり、砂利の海岸線に変わってしまった。
●流れが変わり、魚が取れなくなった海岸、海がある。
●岐宿町の尼ヶ瀬海岸は豊かな海だったが、コンクリートで遮断されてから、カニや小生物が激減し、海藻も魚もいなくなった。
●北海道のある漁協の奥さん方が、人間が100年の間に壊してきた海岸や海を、これから100年かけて復元する運動を行い、その一環として山に植林する活動を続けている。


U−2河川の清浄化を図り、生態系を復活させる。
 これまで河川の多くは、洪水防止や安全の為に川幅を広くし、直線的な河川工事が行われてきました。しかし、こうした河川の形態の変化による生態系の破壊は避けられなくなっています。
 川が直線に流れることによって、よどみがなくなります。よどみが無くなれば、そこに生育するはずの微小生物が生活できなくなります。微小生物が川の中から姿を消すことにより、自然な生態系はなくなり、生物が生活できなくなります。
 また、深くコンクリートで固めた川にすることによって、陸上生物や両生類と川とのつながりが絶たれてしまい水草もなくなります。
 水草やよどみが無くなれば、昆虫さえも卵を産み付ける場所がなくなってしまいます。そして、生物のすべての生態系が破壊されることによって、本来川の持つべき自浄作用もなくなってしまいます。
 その上、無造作に流される家庭排水や事業用排水。川は川でなくなり、大きな溝となり、ただ単に汚い水が集められ、海まで送るだけのどぶとなってしまいます。

(例)
●福江島各地で鮎の成育に影響が出始めています。
●岐宿町では、蛍の減少が見られています。
●白魚が見られなくなっています。
●島内の川でメダカが見かけられなくなりました。

 さこで、私たちの川を取り戻すために、以下のことを提案いたします。
◎建設省が推進を始めた「多自然型川づくり」また、ドイツやスイスで行われている「近自然型工法」をもっと完成に近いものにして、これまで行われてきた川の工事をすべて造りなおす。
◎家庭用排水、事業用排水が川や海の汚染の大部分を占めるといわれています。島民の意識を変革させ、汚染につながらない排水の仕方を考え実行する。
◎積極的に、蛍の里づくり、とんぼの里づくりなど、生物が自然な形で育成できるような事業を行う。
◎川の重要性をもっとアピールし、未来を担う子供たちが川と接する機会を作る。
◎市民の手による川の水質などの調査を行う。


U−3.水確保の問題
 近い将来、福江島も水不足になることが想定されます。だからといって闇雲にダム建設を行うことは、森林破壊、河川工事等の環境破壊につながり是非避けなければなりません。そこで考えられるのが、海水の淡水化事業です。
 これまでも実際に黄島では実用化され、福江島内でも崎山地区などに設置されていますが、これを拡大し、島全体に応用することを考えてはいく。
 福江島は、周囲をすべて海=つまり水で囲まれています。この海水を淡水化することで大量の水が確保されるはずです。そこで、大規模淡水化事業の誘致を行う。また、現在の塩素注入による水の消毒からバイオを応用した消毒方法も可能性として考えていく。
◎静岡県・浜松市/公共建築物への再生水(下水処理水)の有効利用。
◎長崎県・ハウステンボス/処理水の有効利用
◎沖縄県・具志川市/市立図書館におけるEM浄化方を利用した水のリサイクル


Uー4.空気の清浄化
 ★排気ガス
 世界的にも、排気ガスからの地球温暖化、酸性雨等の問題、また資源の枯渇の問題からガソリンや軽油による車社会を見直す動きが高まり、残り数十年のうちに動力、燃料の変換が求められています。
 そこで、福江島ではいち早く自動車の動力の変換を進める実験を行うことを考えました。
 まず、ディーゼル車を廃止し、その後ガソリン車も廃止します。そして、それに代わるものとして水素エネルギー、アルコールを動力とするものや電気自動車等とする。
 これを実験的に島全体として実行し、世界へ対して実用化へ向けての情報発信とする。しかし、島民各人に影響することですので、行政の補助事業とする。
◎カリフォルニア/ゼロミッション(無排気車法)
 カリフォルニア大気資源委員会(CARB)は、1998年までに無排気車の販売を開始するように自動車メーカーに命令を出した。


 ★フロンガス
1974年「フロンがオゾン層を破壊する」と言うローランド博士の論文が発表され、アメリカではスプレーなどによる直接散布が禁止されました。それから10年後の1985年、オゾンホールが発見され、ようやく世界的にフロン全廃の動きが加速し、2000年までに全廃することが決まりました。
 それを受けてわが国では、フロンの年間製造量の届出により許可を与えるよう、生産規制や排出抑制は法律としてあげられているものの、フロン回収に関しては法的規制が無く、一部の自治体もしくは団体が自主的に行っているのが現状です。
 そこで福江島では、フロン回収に関しての自治規制を厳しく設け、回収も必ず行うようにしていく。


Uー5.土の清浄化
◎田畑に使用される農薬を、バイオを用いたものへの変更を考える。また、コンポストより得られる有機肥料の有効利用を行い、福江島で採れた作物の安全性をアピールすることができるようになる。
 しかも、有機栽培としての付加価値がつくことによって高値での取引ができるようになる。
◎全国的にもよく話題に上がる、ゴルフ場の農薬問題にしても、バイオを使用した安全性の高いものにする必要がある。もし大量の農薬が撒かれているとしたら、プレーする人たちにも問題が生じるおそれがあるし、土の中に吸収され水脈の汚染も考えられる。


Uー6.ゴミ問題
◎市民への啓蒙活動を行い、ごみについての知識を植えつける。

◎ゴミの細分化を行うと共に、ゴミを出さない街づくりを目指す。
 福江市の現在のゴミ処理とは、可燃ごみと不燃物ゴミの処理だけで、可燃ごみの中には、燃やしてはいけないものも大量に含まれ、それを燃焼させることによってダイオキシン等の有毒物質の発生も予想される。
 また、不燃物処理もガラス、鉄、プラスチック、アルミなどすべて混ぜており、処理場の限界も近い。
 可燃ゴミ・不燃ゴミ・資源ゴミ・大型ゴミ・有害ゴミ
 最低でも5分別。できれば7〜10分別を実行し、リサイクルを有効にする。

◎生ゴミをバイオなどを使い、有機肥料にして再利用する方法が各地で実用化されている(コンポスト)。これらの方法を使い、できれば各家庭で使用したり、余った分は売却できるシステムを作る。

◎可燃ゴミのエネルギー利用
 可燃ゴミの固形燃料化プラントを建設し、その固形燃料を使った室内温水プール、クアハウス、農業推進の実験施設を含めた島民交流のための施設を建設する。
(例)
★自動燃焼制御装置(ACC)の使用によって、可燃ごみを一定に保ちエネルギーとしての利用が容易になった。実際に、北九州では発電で利用している。可燃ゴミ4Kgで家庭の1日分の電力がまかなえる。
★ゴミ焼却熱の利用実験
 自家発電。蒸気。地域冷暖房。給湯。温室。温水プール。農業施設園芸。
★固形燃料化プラントは各地で建設中である。

◎資源ごみなどの引き取りルートの確立
 1997年度から施行される包装廃棄物リサイクル法により、ゴミ再生処理施設設備費が大幅に増額されている。このことも含め、第3セクターも考慮に入れて廃棄物処理施設、再処理施設の建設を進めていく。
 また、島内だけで再処理するのには限界があるため、島内での処理が難しいものに関しては、本土の再処理業者とのルートの確立を考え、徹底的にゴミの減量化を推進する。
 金属に関しては、それぞれの分別を行い、インゴッドを製造し、再処理業者へ売却する。

(資料)
 包装廃棄物リサイクル法が1997年度から施行されるのに対応して、厚生省は1996年度予算概算要求で、市町村のリサイクルセンターなどの建設を支援する再生処理施設整備費を、1995年度の2倍にすることを決めた。
 要求するのは、収集した空き缶やビン、紙類などを分別したり、圧縮する「リサイクルセンター」。同センターに展示施設などを併設した、より規模の大きい「リサイクルプラザ」。整理したゴミを再生処理業者に渡すまでの間保管する「ストックヤード」の三施設の整備補助費、約181億8千万円。補助率は、市町村の財政状況によって、二分の一と、四分の一に分かれる。
 1995年度建設予定も含めて、リサイクルセンターは全国に24箇所。リサイクルプラザが28箇所。ストックヤードが1箇所しかない。
 厚生省環境整備課は、ゴミの再生利用を起動に乗せるには、今後10年間に3施設あわせて400箇所以上が必要と見ている。

<ゴミ問題、各地の実証例>
◎壱岐・郷ノ浦町
 町内の古紙を回収し、まとまったところで佐世保の再処理業者へ売買している。
◎長野県
 農業用のビニールなど、農業用廃プラスチックの再生処理。
◎北海道・札幌市
 可燃ごみに製剤クズを混ぜて燃料化し、都市部の空調に用いている。
◎北海道・富良野/島根県・出雲市
 生ゴミを肥料にして、ゴミの完全資源化を図っている。また、ゴミ固形燃料プラントも実施している。
◎大宮市
 ゴミの焼却熱を利用し、焼却灰を溶解し、、道路の敷石ブロックにしよう。
◎欧米で進められているECP(エンバイロメンタル・コンシャス・プロダクト)と呼ばれる「環境調和型製品」(別名「グリーン・プロダクト」)の開発の推進。
 欧米では、行政官公庁はもちろん、一般市民の間でも、これらの環境品質の高いものを優先的に購入することが始まっている。
◎愛知県・江南市
 昭和51年より、可燃系ゴミ5種類、不燃系ゴミ5種類、廃食用油、埋め立てゴミ2種類、粗大不燃物(廃プラスチックを含む)と特別ゴミの14種類に分別している。
◎三重県・桑名市/島根県・出雲市
 ゴミの有料化、再資源化等による減量化。
◎宮崎県・延岡市
 清掃工場の熱源を利用して、文化センター、下水処理場、衛生センターの給湯、冷暖房に使用。また、ゴミの減量、再利用を推進している。
◎島根県
 エコライフ行動指針策定
 環境に優しい商品選定・購買システムや、市町村にリサイクルセンター、クリーン焼却装置、石鹸製造装置を設置、ゴミの減量・有効利用を推進している。
◎埼玉県・大宮市
 分別収集後、缶は選別機によってアルミ、スチール等に分け、プレス機によってインゴッドを作り、資材メーカーに売却。ビンも色別に分け売却。繊維、古紙は委託業者が回収。
◎新潟県・新津市/和歌山県・田辺市
 町内会、各種団体ごとに資源ごみを回収してもらい、奨励金を交付している。
◎福井県・鯖江市/静岡県・沼津市
 きめ細やかな分別収集によるゴミ減量化・資源化の推進。
◎島根県・安来市
 不燃ゴミの4種分別と、記名式透明袋による減量化
◎長野県・臼田町
 一般家庭から分別し出された生ゴミを堆肥生産センターで堆肥にし、農地へ還元。
◎出雲市
 ゴミを集める代わりに、2台のゴミ処理車が市内を回る。1台は生ゴミを有機肥料にする「コンポスト号」。もう1台は、可燃ゴミを固形燃料にする「タウンコール号」。
◎福岡県・北九州市
 ゴミによる発電が実用化されている。
◎大分県・津久見市
 市内の可燃ゴミを処理する固形燃料化プラントを建設中で、この固形燃料を小野田セメントに売却し、セメントの製造過程で固形燃料を燃やし、その灰もセメントの原料として用いることができる。
(固形燃料化プラントに関しては、札幌市、富良野市などでは既に動き出しているほか、関東・近畿・東海・北陸などで建設の動きが広がっている)


U−7.未来エネルギー
 商業運転として稼動している化石燃料、原子力、水力に代わり、エコロジーを中心とした実験的な発電所の誘致を行う。
 地球の温暖化、資源の限界によって、化石燃料による発電が近年問題とされ、原子力発電所が廃棄物の問題と2年に1件の割合で、国内において故障をしているという危険性を考慮した場合の未来のエネルギーを誘致する。
 また、熱と電機の需要に合わせたコージェネレーション(発電を行い、同時にその廃熱を利用して熱給水を行うシステム)の小型分散配置。河川水、下水処理水などの温度差エネルギーをヒートポンプにより利用する方法。ゴミ焼却余熱での発電や熱の供給。紙ごみなどの固形燃料化等の実施可能なものの導入も考える。


(可能性のある未来のエネルギー)
@太陽熱発電
 アメリカのカリフォルニア州モハベ砂漠に建設されたSEGSプラントには太陽熱発電が9基あり、総容量35万キロワットが商業運転されている。
A太陽光発電
 新エネルギー導入計画によると、2000年までに5万キロワットの導入が計画されている。
B地熱発電
 現在の容量は27万キロワットで、2000年までに100万キロワット、2010年までに350万キロワット増産予定。
C風力発電
 欧米では、本格的な商業利用が行われているが日本ではまだ少なく、試験研究用に各地に建設されている。
 島根県出雲市は、ヤマハ発動機に依頼し、商用電力と系統連携している。
 三菱重工業では、長崎造船所で開発・製造している風力発電設備を、これまで欧米、メキシコに八百基以上輸出し、インドにも技術供与している。(1995年11月)

D水素エネルギー
 水素は、水の電気分解により無尽蔵に得ることができ、燃焼すれば水蒸気となる。水から作られ、再び水に戻る。クリーンで発熱量の高い燃料である。
 また、通産省が提唱している「水素利用国際クリーンエネルギーシステム」では、砂漠などで大規模に太陽光発電を行い、この電力で水を電気分解し、できた水素を世界に供給するというということも考えられている。計算上では、サハラ砂漠の数パーセントに太陽電池を設置できれば、世界のエネルギー消費をまかなえることになる。

E波力発電
 山形県・酒田市の運輸省施設では、実用化試験に成功。
 波力発電のコストは、太陽光発電の1/10.。風力発電の半分程度である。

F潮力発電
 潮の満ちひきのエネルギーを利用した発電。
 五島架橋の話を耳にすることがあるが、たとえば橋の柱の部分に機械を取り付ければ、そこに生じる潮の流れによって電気を起こすことができる。


U−8.省エネルギータウン構想

 ソーラーシステム、風力発電装置など、簡易発電装置を各家に設置することを奨励し、基本的な電気エネルギーを自宅でまかなえるようにする。余剰な電力は、電力会社に売却することもできる。
 上記のエコロジーを考えた発電方法は導入するが、各家庭で発電する方向が進めば、大規模な発電所がいらなくなる。
 クリーンなエネルギーを大量に発生させることよりも、クリーンでもエネルギーの発生は少量に抑える方向にする。

(例)
@京都府・京都市
 京都市健康増進センター、保健所等の市施設へのコージェネレーションの導入。
A新潟県・新潟市
 アクアパークのコージェネレーションの導入。
B宮城県・東北電力
 都市全体への冷暖房可能な熱供給事業(深夜電力を利用した蓄熱式ヒートポンプ方式でのエネルギーの有効活用)
C福岡県・北九州市
 下水処理場で発生する消化ガスのうち、今まで大気中に燃焼放出していたガスを隣接工場へ供給し、ボイラー燃料に利用し、ボイラーで発生した蒸気を処理場の消化層加温に利用する。
D茨城県・日立熱エネルギー
 日立セメントの工場廃熱を利用し、地域冷暖房システムの整備。
E山口県・下関市
 一般廃棄物の焼却処理に伴い発生したエネルギーを、蒸気として回収し、タービンや工場内機器、工場内給湯、冷暖房及び余熱利用施設に分配。
F大分県・津久見市
 可燃ゴミの固形燃料化システムの実証プラント。
G京都府・京都市
 太陽光を蓄積し、夜間の照明ができるバス停などの電照式標識柱の設置。
H奈良県・下北山村
 小又川下流に小水力発電所を設置し、隣接するスポーツ公園に自家供給を行う。余剰電力は、電力会社へ売却。
Vすべての人に優しい街づくり
「足腰の弱い老人、障害を持った人、子供たちが暮らしやすい島」

 現状のところでも紹介させていただきましたが、これだけ老人比率の高い福江島が、老人にとって暮らしにくい島であること事態がおかしいことです。もと島内の道路事情、交通体系、建築設備、施設の付属機器、医療体やシステムなどを総合的に考え、老人や障害者が安心して、更に楽しく生活ができるような街づくり、島づくりを推進する。
 そして、このような島をつくることによって若いときに都会へ行っていた人たちが、または都会で生まれ育った人たちが人生の最終地点として福江島に移住したいと考えていただけるのではないかと考えます。自然が多く残っていて、行動がしやすく、しかも医療面が充実して安心な島。福祉の島としても、福江島が情報の発信基地となることができます。情報を送ることができるようになると新しい産業も生まれ、若い層も含めて人口が増大することができるでしょう。
 また、足腰の弱い老人や、障害を持つ方たちが生活しやすい街と言うことは、健常な方も含めて、すべての人が生活しやすい街であるはずです。障害を持たない健常な方たちもいつかは、足腰が弱ってきますし、もしかしたら障害を負う可能性もあります。このようなすべての人たちに優しい、そして誰もが生活を送りたくなるような街づくり、島づくりを推進する。

V-1.交通体系を、社会的弱者の立場で見直し、利用しやすいものとする。
 @車椅子の方たちでも、一人で乗り降りできるような交通機関の工夫。(船、飛行機、車など)
 A雨天でも、傘をささずに乗り降りできるようにする。
  障害を持つ方たちは、容易に傘を差すことがままならないので、傘を使うことなく、乗り物への乗り降りができるようにする。
 B船の中の段差をなくす。
   フェリーの場合は、エレベーターの設置も考えて欲しい。
 C車椅子でも自由に入れるトイレの設置。
   特に、長時間の旅を余儀なくされるフェリーの場合は絶対必要。


V-2.道路の整備
 ◎道路の段差をなくし、車椅子でも自由に往来できるようにする。
 ◎道路のガタガタをなくす。
   車椅子の方や、老人カートを引いている人たちの中に、現在のレンガの歩道を歩くと、ガタガタして気持ちが悪くなるので、車道を通行すると言う方もいる。また、目の不自由な方たちにとって、レンガのガタガタが、盲人用の歩道の目印になる印との区別がつきにくいとの意見もある。
 ◎安全な歩道を十分に設ける。
 ◎歩道の植木は、十分検討した上で植える。
  緑を増やすのは結構ですが、そのために歩道の半分以上が使われているところがあり、特に足の不自由な方たちにとっては、邪魔ですらある。
 ◎バスの乗り降り
  安全で、スムーズにバスの乗り降りする場所が無い。
W.アメニティータウン構想
W-1.自然を利用した公園の建設

 森林を生かし、川が流れ、子供が走り回り、老人が散歩して、生物が自然に生活を営んでいる。そのような公園を建設する。
 建設省が推進している「ビオトープ計画(生命の場所)」また、自治体が各地で建設しているようなアーバン・エコロジーパーク(自然生態観察公園)をとりあげ、自然の中に存在する総合公園を造る。そして、川や海や土と常に触れ合うことができる島であることを強調する。
(例)
◎国営昭和記念公園では、「トンボの湿地帯」が完成している。
◎国営ひたち海浜公園では、以前からあった流れを保全しながら、生物のいる空間を具体化している。
◎琵琶湖では、ヨシ原の拡大を図っている。

W−2.図書館、芸術館などの建設

 福江島には、体育館や運動公園、武道館などの体育施設は多く存在しているが、島民が落ち着いて本を読むようなアカデミックな施設が少ない。
 緑地を豊富に取り入れた、図書館、美術館、市民の談話室、自由に使える会議室や最新情報システムを取り入れた、市民の情報や知識の発信源となるような施設の建設。


W−3.旧町名に戻す

 現在のように福江町と言われても、どこなのかわからないような町名は廃止する。
 福江市には、行政で使われている町名と、町内会で使用される町名と、普段市民が把握しやすいように使用している旧町名が存在します。
 この旧町名には、昔ながらの街の様子を現したものが多く、(銀屋町、紺屋町、大工町、船頭町等)、観光のためにも、新しい観光ルートの開発に役立つ。また、市民にとっては、あたり前のように使用しているものであり、現在の町名から旧町名に戻すことを提案します。


W−4.高齢者同士による互助活動

 高齢者は、じっとお世話を受けなさいと言うのでは、高齢者もやりがいが無いのではないか。高齢者が大部分を占めるこの福江島の中では、その地域の中において、重要なマンパワーの一員と位置づけ、高齢者同士の互助活動を活発にすることで、高齢者参加型の地域組織を作る。
 また、シルバー人材センターなどの活動を全島的に推進し、福祉や医療もリンクさせるシステムを作る。


W−5.福江独自の祭り・イベント

 福江市内で現在行っている「福江ねぶた祭り」も約20年が経過し、福江市民にも福江の祭りとしてすっかり定着してきたようです。また観光客でも参加できる祭りとして、福江島観光にも大きく貢献してきたようにも思えます。
 ただ、島民からの不満も聞かれないわけではないようです。そこで、ふくえ祭りの更なる発展を願い、下記のことを提案します。
◎福江の言葉に基づいた名前を持つ、自分たちで考えた独自の祭りが必要。
◎商店街の祭りと言われないような、島民を巻き込んだ祭りを望む声が聞かれる。
◎島民の業者で製作できるようなものにする。現在のねぶたは、青森から業者を呼んで製作しており、祭りの為に用意したお金を、地元に落としていない。

★例えば、福江市商店街のアーケードいっぱいになるように大人から子供まで含めて、千人くらいの人たちで、一斉にチャンココを踊ると言うのはどうだろうか。そして、その間をヘトマトや各地域の祭りを披露していただき、最後に、全員で大綱引きを引くなどと言うことも目玉になるのではないかと考えます。
 そのためにも、小学生の低学年から、チャンココや自分たちの祭りと言うものを伝統的につなげていくと言うことも大切なのではないかと考えます。

W−6.特産品・地場産業

 五島は、これと言った民芸品、特産品が少なく、観光客が来島し、お土産を買おうと思っても魅力的なものが少ないと言う声も聞きます。
 一部の団体で研究開発をしているようですが、全島的なネットワークを作り、コンピュータでデータベース化を図り、広くアイディアを募集し、大胆な特産品開発システムを作れないものかと考えます。
 海洋牧場、地熱を利用したカーネーションの栽培、また古くから行われ実績もある珊瑚を含む水産加工品などの開発・育成の支援を強化する。
 そのためにも、まず島民が特産品・地場産業を再確認し、地元消費を進める。そして島外へのアピールを行うなど官民一体となった地場産業、特産品のサポート体制を強化する。
(例)
◎超高級カンコロ餅
◎キンナゴの押し寿司
◎五島焼きの壷入り、ツワブキの酢漬け
◎焼酎の開発

X.マルチマディア文化都市構想
 福江島は、本土からやく100Km離れた“離島”です。離島の最大の欠点は、距離、位置によるハンデがもたらす“交通問題”と“情報が遅い・少ない”と言うところにあります。しかし、最先端の情報システムを見た場合、「距離」や「位置」によるハンディキャップは既になくなりつつあります。「福江島は周囲を海に囲まれ、本土から遠く不便である。」と言うところから「福江島の隣には、福岡・大阪・東京・ニューヨーク・ワシントン・パリ・ロンドンと無限大に広がり、繋がっている」と言うことに変化しています。そこには「離島」と言う概念は存在しません。
 例えば、コンピュータ通信やインターネットを用いれば、我々の持つ情報を発信したり、情報を受け取ったりできます。また、通信・映像を利用した会議システムを島の各地に導入できれば、世界中の人たちと瞬時に会議をするということも夢ではありません。このようなシステムは、現在世界中で行われ始め、日本でも一部の地域・企業で既に実施されています。このようなシステムを早い時期に島全体に導入することによって、島民の「ハンディキャップを背負っていると言う意識」そのものを払拭することができるのではないかと考えます。
 そこで重要なことは、こういったシステムが現実に確立したとしても、一部の人だけが独占すると言うことは避けなければなりません。大人でも、子供たちでも自由に活用できるネットワークシステムになると言うことが大切なのだと考えます。そうなれば、子供たちの自由な発想もみることができ、足腰の不自由な人も、老人であってもすべての人が自由な発想で、自由に情報を集めたり、情報を作って流したりできます。彼らの可能性も無限大に広がっているのです。


X−1.福江マルチメディア館
 福江島にマルチメディアのシステムを構築するためには、そのすべてを管理したり、市民が容易に、楽しくそして効率よく情報をやり取りできるようなシステムを作らなければなりません。そして、福江島から発信できるような情報をまめるような部署も配置する必要が出てきます。

@インターネットのクラブハウスを作る。
 コンピュータを持っていない島民であっても、常設のコンピュータを使用し、自由に情報の出し入れができるようにする。マルチメディア館だけでなく、人々が集まってくる図書館や芸術館、役所、学校等の主要施設には常設できるようにして、島民が自由に集めたい情報、知りたい情報を収集できたり、送ったりということができるようなクラブハウスを作る。
(例)
ボストンにあるインターネットのクラブハウスでは、自宅にコンピュータが無い人たちが集まって、自由に情報を集めたり送ったりできるようにしている。

A福江島情報作成室
 マルチメディア館に、これから福江島が実行していく環境などの情報を作成し、外部に発信するための専門のチームを結成し、常時福江島の情報として発信する。


B通信会議システムの導入
 他の主要施設ではもちろんのこと、このマルチメディア館内にも通信システムを利用した遠距離間の会議システムを導入する。
 このシステムができれば、島外へ行かずとも色々な会議や研修が受けられることになります。確かに現地へ行かなければならないようなこともありますが、無駄な出張が少なくなり、経費の節減、交通の不便さ、時間のリスクが少なくなることは間違いないことです。


Cネットワークのサービス機関の構築
 遠距離でもすぐに通信できるとは言っても、通信料は遠くなればなるほど高くなるものです。そこで、行政もしくは、第3セクターでのサービス機関を設立できれば、そこからの金額になるということで割安にもできます。またひとつの方法として、月単位の定額制とすれば、どれだけ使用しても良いことになり、使用しやすくなります。
 そして、島民が自由にかつ簡単に自宅で情報を用いた恩恵を受けられるよう、集中管理システムを作る。
(例
◎テレトピア計画
 郵政省が、1985年から展開している「未来型コミュニケーションモデル都市」の通称で、キャプテンや双方向CATVなどニューメディアの普及を図り、地方都市の情報通信機能を高め、地域振興に役立てようという計画。
「水道の遠隔自動検針システム(長野県諏訪地区)」
「総合医療情報システム(静岡市)」
◎ニューメディア・コミュニティー構想
 通産省が打ち出し、地域の医療や防災システムにCATVを中心とした地域開発を行っていく構想。


5−2.通信を利用した医療
@遠隔医療システム
 映像・通信を使い、遠隔地の医療を受けられるようなシステムができれば、医師がいないような島の人たちが、今までよりは安心した生活ができる。また、非常時での対応をずっと早く、また正確になるはずです。
 健康に関する情報や、簡単な健康管理チェックシステムを作り、常に交信を行い、、それぞれのデータとして保管できるようにすることも必要です。
A映像やデータを通信システムとして、色々な病院や研究施設に送ることができれば、より確実な医療が構築できるのではないか。たとえば、CTスキャン、MRI、内視鏡等での映像をそのまま大学へ送ったりもできるような設備。

Y.市民参加型の自治
 これまでの提案をすべて実行できれば、福江島は自立した強い地域へと変わっていくはずです。そして、これまで3割自治(或いは1割自治)と呼ばれていた福江島も、強い地方自治体へと変貌を遂げるに違いないと考えます。
 しかし、福江島にミニ中央集権システムが出来上がると言うのでは意味がありません。国家・官僚主体・行政主体のシステムから、市民が自治の主人公であるような、市民が地域の創造者であり、所有者である自治体を作らなければなりません。なぜなら、地域(福江島)に権限を移譲するという事は、「国民からの厳粛な信託」を国民に近いところへ返すと言うことであり又、市民自信の税金を市民の意志により使うことが、単純で明快な自治の姿であるからです。
 そこで地域は、市民との距離を縮めるため、様々な制度を実行する必要があります。その過程では、情報公開、行政手続きにより、市民に開かれた行政の体制づくりをすることが必要となります。その手段として大いにその機能を発揮するのが、前提で提案した「マルチメディア文化都市構想」です。この構想を有効に活用すれば、市民が自由に必要な情報を閲覧したり、市民全員のアンケートを自由に行ったり、また個人の考えていることを自由に発表できたりと言うことが可能となります。
 このようなシステムが確立され、福江島全体で実行されるようになると、現在の間接民主主義という形態から、直接民主主義へと移行する可能性も大となります。


Y−1.情報公開システム
 福江の様々な情報、島民が見る権利を有する資料を自由に公開する。例えば、市議会、町議会などの議事録をタイムリーに閲覧できるようにしたり、情報公開が許される範囲のものは最低でも閲覧できるようにする。
 また市政に関しても、市民が自由に意見を言えるようなネットワークを作る。
(例)
◎高知県では、知事が自らコンピュータ通信で、県民の意見を聞くようにしている。


Y−2.公的施設の市民管理システム
 色々な施設に対する市民管理システムを作り上げるために、ネットワークを最大限に発揮する。
 市民の為の、市民による島づくりを構築するために、自由な情報公開と、情報発信を行えるようにする。


Y−3.市町村合併
 福江島をひとつの実験都市として、島全体として行動できるように、また島の統一的なイメージを促進するために、福江島はひとつの市として合併することも必要であると考えます。
 五島中央病院問題も含めて、福江島全体に関る問題に関して、きちんとした決定機関が無いように、すべてのことがあやふやになっているように見受けられます。また、それぞれの市・町のが考え方がバラバラで、まったく同じような施設をそれぞれが作ってみたり、統一性が感じられません。福江島は、ひとつの島として、全体で力を合わせて、力を持った地方自治として進むべきと考えます。

※合併することで生じるメリット
◎公務員・議員などの人件費の削減(行政経費の節約)
◎無駄の無い施設・設備
 (各市町村が、小規模の施設を建設するのではなく、島に大規模・高レベルな施設を持てばよい)
◎行政基盤の強化
◎ひとつの島としての機能の強化


※市町村合併に対する優遇処置
◎合併の場合、地方交付税の合算算定替えの適用期間が5年から10年に延長
◎合併に伴い、臨時的に行われる街づくりの為の事業に対し、大幅な財政的優遇処置
◎過疎債における特例も経過的に維持
◎県の補助金の特別財政処置
◎議員定数や存在に関する経過的処置も、その期間の延長を行う。

※合併より生じるデメリット
◎公務員の職員数が減少することによる働く場所の不足
◎地方交付税等による自治体への交付金額の減少。
 (このことは、とても重要な問題です。優遇処置のところでも紹介しましたが、合併算定替えの適用期間が10年に延長されるので、合併するのであれば、この期間内にプロジェクトを進行させなければなりません。
<※地方分権推進法 平成7年5月成立/5年間の時限立法>

<付録>市町村合併について(h13.5.30・市町村合併に関するシンポジウムにて・・於・福江文化会館 平山匡彦)

 個人的には、2005年までという期限を突きつけられ、「まずは、合併ありき」と言う考え方は、あまり好きではありません。
 地方分権、地方の自立のための合併といいながら、結局、お金をやるから中央が決めた線引きにのっとって期限までに合併しなさいといわれ、そのまま合併するというのでは、いつまでたっても本当の意味での地方分権や、自立はないのではないかと考えます。

 何の目的も持たず、何も考えず、ただ合併だけしてしまうと、何もできないうちに優遇期間の10年など、あっという間に過ぎてしまいます。その後は、公務員を中心としたリストラが始まり、その恩恵を受けて生活をしていた商店や団体は、大きく影響を受けるということになると思います。また、当然、公共工事等は半分以下に減ってしまい、働く場所がなくなり、人口が激減してしまうということが考えられます。ただでさえ進んでいるこの島の過疎化に、一層拍車がかかることになると考えられます。

 ですから、私は、まず必要なのは、何のために合併するのかというコンセプト。そしてこの島の未来へ向けてのビジョンなのではないかと考えます。
 1995年、青年会議所という団体で、『五島列島・福江島 未来への提言1995』と言う冊子を作り、提言を行いました。
 簡単にその内容を説明しますと、
● 護岸工事で固められた海岸線や、 直線的に深くコンクリートで固められた河川を近自然型の工法のものに作り変える。そして、自然環境を取り戻し、また、景観を取り戻す。
● ゴミ問題をもっと深く考え、この島がゴミの島になってしまわないようにする。
● 極端なところまで言うと、この島の中を走る車は、ディーゼル車やガソリン車を廃止し、燃料電池や、新しいエネルギーを使った車に変えてしまう。
● また、未来エネルギーを誘致し、開発をする機関なども誘致していきたいと考えています。
★ それと、バリアフリーなどを積極的に行い、足腰の弱った老人や、障害を持った人たちが、自然に、あたりまえのように健常人と生活ができるような島作りを行う。
★ そうすることによって、Uターンや、Iターンを増やし、この島を終の棲家にしていただけるような環境作りを行う。
★ そして、老人や、障害者が、訪れやすいような観光地を目指す。
★ そのように、全ての人に優しい島作りを積極的に推進する。
★ そのような島にするには、当然、医療・福祉の充実は図らなければなりません。
  提言書の内容は、簡単に申しますと、大体こんな感じです。
 このような企画は、こんな小さな島だからこそできるのです。そして、この島でできたことは、日本という国でもでき、地球という単位でも実行できるはずです。

●このように、自然環境を取り戻し、自然と共生する島作りを目指し、そのパイロット地区となることができれば、我々の島というものを世界中に発信することができる。そうなれば、日本中・世界中から人が集まってくるようになると考えます。
 また、島の自立を考えた場合、農業や漁業というのは、最も重要なことだと考えます。
そちらの具体的な部分は、専門の方たちにお任せしたいと思いますが、先ほどの自然環境と共生する島作りも、これらの農業や漁業に対しても良い方向に働くのではないかと考えます。
 
 このような島作りを行い、活力ある自立できる島作りを行っていく。 
 このような島作りを、島全体が一緒になって実行していくためには、島は一つになっていたほうが良いのではないかと考えています。
海や、川やこの島の空気をきれいにしたいと思ったときに、部分的に、ここは福江市、ここは富江町というのは、逆におかしいのではないでしょうか。「島は一つ」というのは、ごく自然な発想なのではないでしょうか。
 
 先日、本土からこの島に移住してきた方とお話しをしましたが、彼が言うには、
「この島は、豊かで、すばらしい島ですね。農業もできるし、漁業もできる。自然もまだ残っているし、十分に自立・独立できる要素を持っている」とのことでした。

 合併を考えるよりも先に、この島のことを考えていく。そして、合併する方向になった場合、どのようにすれば、この島が自立できるようになるのか。そして、働く場所を増やし、いかに人口の減少を食い止め、逆に増やすことができるのか。官民一緒になって考え、即実行に移していく必要があると思います。

Z.おわりにあたって
 私たちは、人類が生存可能な地球を残すため、今すぐにでも現代文明を再構築し、産業構造を変革しなければなりません。
 
 地球と調和共生するよう社会システムを改革し、しかも経済が成り立つように作り替えなければならないのです。 これはまさしく革命です。「農業革命」「産業革命」そして「情報革命」から「エコロジー革命(ブループラネット レボリューション)」へ。
 「エコロジー革命」は、人類だけの問題ではなく、地球上に生きとし生けるもの総ての、そして地球そのものの生存に関る、緊急かつ最重要な課題なのです。

 一刻も早く、人類共通のコンセンサスを導き出し、持続可能な文明の具体的なビジョンを提示しなければなりません。世界各国が「地球と調和共生型の産業」を育成するため法整備を行い、総ての社会システムの具体的・実践的な変革のための施策・実験等を速やかに行うことが必要です。

 そこで、私たち“社団法人 福江青年会議所”といたしましては、この五島列島・福江島を「エコロジー革命(ブループラネット レボリューション)」のパイロット地域として指定していただき、「エコロジー」と「クリーン」をキーワードにした島づくりを行うことを提案いたします。


<アクションプラン1>
@官民一体の研究機関の設立、または組織の結成。(仮称/エコロジー&クリーンアイランド推進委員会)
 県、各自治体、議会代表、大学研究機関、有識者、民間団体などで組織。
A「地球環境調和共生型産業育成法(仮称)」の制定を目指す。
 同時に、「離島振興法」を、それとリンクする形で、パイロット地域指定等離島に有利なように改正に努める。
B環境経済問題に広域的に取り組むためにも、福江島をひとつの行政区にする。
C行政・議会・医療・教育等、公共のものは総て情報ネットワーク化を行い情報公開し、民間と協力しながら地球環境調和共生型のまちづくりを行う。


<アクションプラン2>
@公共事業(港湾・土木・建設)を総て、環境調和、回復、蘇生型の工法に変換する。既存の防波堤や護岸工事も新工法で造りかえる。
Aソフトエネルギーの積極導入。ソーラーハウス、リサイクルハウス建設を推奨し、法的助成を行う。又、専門業者の育成に努める。
Bディーゼル車の全廃、ガソリン車の将来全廃を目指し、電気自動車、水素・アルコール自動車等、環境に優しい車社会のシステムを作り上げる。
Cバイオテクノロジーを積極的に導入し、健康的で安全な農業・漁業の育成。同時に、生ゴミや堆肥、上下水道の処理などにも利用する。
D官民一体となって、グリーン経済を推進し、あらゆる工夫を凝らしてリサイクル型社会を作り上げる。
Eこの実践運動の記録は、全て世界に公開することを前提に行い、あらゆる資料等をデータベース化し、インターネット等に流す。
F世界規模の環境会議の開催。環境問題の研究機関や大学の研究室の誘致。
G環境に関るあらゆる実験施設や企業の誘致を図る。
H環境問題を学校教育に導入し、日系地球市民としての教育を行う。
発行日/平成7年12月9日
発行/ 社団法人 福江青年会議所
編集/ 社団法人 福江青年会議所 指導力開発委員会

委員長 平山匡彦